海を渡った日本の絵本(産経新聞)

 「浦島太郎」から「魔女の宅急便」まで、実は世界30カ国以上で翻訳され、海外でも広く読まれている日本の絵本。翻訳先に合わせ、絵や物語が変わった作品もあり、絵本から各国のお国柄が見える企画展が東京・上野の国際子ども図書館で開かれている。図書館側では「海を渡った日本の児童書が、これだけ一堂に集まるのは初めて」としている。(飯塚友子)

 この企画展は「日本発☆子どもの本、海を渡る」。日本の原書と翻訳本、約300点が展示される。

 例えばアニメ映画にもなった「魔女の宅急便」(角野栄子作、林明子絵、福音館書店)は、韓国やイタリア、インドネシアなど8つの国と地域で翻訳されている。日本の原書ではヒロイン、キキはかわいらしい少女に描かれるが、カナダ版やスウェーデン版の表紙では怪しい魔女そのものだ。

 同図書館児童サービス課の小林直子課長によると、「魔女は『怖いもの』という文化の国では、原書の表紙はかわいらし過ぎるそうです」と説明する。一方、林さんのイラストの人気が高いアジア各国では、オリジナルの絵のまま翻訳されている。

 生活習慣の違いが表れた絵本もある。「おふろだいすき」(松岡享子作、林明子絵、福音館書店)の原書では、主人公は和式のふた付きの浴槽に入ろうとするが、英語版やオランダ語版の同じページのイラストにふたはない。「お風呂にふたのない国では違和感があると、林さん自身が描き直しています」(小林課長)

 また、英語版「うりこ姫」のように、「桃太郎」も交じったのかスイカから生まれた少女が、鬼退治する物語に変化したケースや、英語版・宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の主人公ジョバンニが、むしろ日本風に「ケンジ」になって輸出されたケースなど、思いがけない変化やお国柄を楽しめる展示だ。

 国立国会図書館の分館である同図書館では、これまで日本書籍出版協会や出版社などを通じ、翻訳された児童書の出版情報をデータベース化、作品収集に努めてきた。かつては海外作品の“入超”が続き、同図書館の集計では1950年代、翻訳された日本の児童書はわずか3件だったが、70年代に約500件、90年代に約2千件と急激に伸び、2000年以降は約3千件にも上っている。

 80年代までは米仏など欧米での出版が多かったが、90年代以降はアジアでの出版が目立ち、昨年8月時点では韓国、台湾、中国が翻訳国のベスト3という。

 企画の中心になった小林課長は「それぞれの国で変化した絵本の姿を楽しんで」と話している。入場無料。9月5日まで。

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